The Passion : Behind the Wings of the Movie

Gazzeta del Mezzogiorno 11/27, 2002 by Emilio Salierno

「最後の晩餐」のためにメル・ギブソンが選んだのはサン・ニコーラ・デイ・グレーチというマテーラの断崖を削って掘って作られた古い岩窟教会だ。
ベルナルダ生まれのミケーレ・ルッソとここマテーラ出身のアントニオ・ジノーザとロザーリオ・ガリアルディが12使徒の3人として主演のジム・カヴィーゼルとこの感動的な場面で共演を果たした。
      
イエスが12人の使徒達に説教をしている。有名な「最後の晩餐」の場面だ。3人はここで初めてジムに会った。12人の使徒を演じる俳優のうち本職の俳優と言えるのはたったの4人。ヨハネ役のブルガリア出身のリースト・イーフコフ、ペテロ役のイタリア人、ヤコブとトマスを演じる2人のアルジェリアの俳優。あとは近辺から募って選ばれた素人たちだ。ここマテーラからは3人(上記)も選ばれてこれは誇らしいことだ。だって監督はあのアメリカの有名なメル・ギブソンなんだから。

Mel Gibson at San Nicola Dei Greci, old church in Matera
グレーチ教会の前で子供達に話しかける. どこにいても 子供達には格別愛想のいいメルだ

38才のミケーレは映画製作に関しては全くの素人じゃない。裏方としてコッポラをはじめいろんな監督のもとで働いたことがある。現に今コッポラのために小さいけど仕事中だった。だが彼によれば:

「自分の家の庭先のようなところでこんな偉大なプロジェクトが進行してるじゃないか....これに参加しなくては。参加することが何か運命みたいに感じたんだ。最初はなんでもいい自分の技が活かされればと思った。とにかくサインにこぎ着ければ....だからここに戻ってきた。サインできてとても幸せ」

「ジムは素晴らしい...とても気に入った。自分に割り当てられたことだけでなくいろんなことに気を配ってる。細心でとても几帳面だ。この映画をいいものにするために全霊を捧げてる。すごい集中力で。みんながハラハラするくらいだ。

メルは....愉快で快活な人だ。見てるだけでこっちも引きずり込まれてしまうね(^^)それと気がついたんだが...彼が怒ったりどなったりしたところを見たことがない」

Mel Gibson in pre-production at Matera
こっちはどうかな、あっちは? 忙しい監督メル. 手にしてるのはコーヒーじゃなくレンズ

59才のアントニオは普段はマテーラの役所に勤めてる。彼の容貌を見ればパレスティナから来たと言っても通るだろう。使徒役にぴったりだ。選ばれたのも無理はない。

「ジムがアラム語で話すのを初めて聞いた時は印象的だったね。たぶん回りの雰囲気と映画のテーマと古い言葉の持つ神秘的で深い響きのせいだと思うが、まさに自分達が2千年前の聖地にいると錯覚してしまったくらいだ.....信仰の有無にかかわらず、誰でも神秘的な想像心をかきたてられる雰囲気が上手く出ていた。映画だということすら一瞬忘れてたね」しばらく考えて続ける。

「撮影が終わった後ですら、ジムの様子は悲しそうで憂いに満ちていて常にイエスそのものだ。とても意識してるように見える。撮影に入る前は必ず小さな聖遺物にキスして心構えを整えている....感動的な姿だ」

アントニオの応募の動機は最初はただの好奇心からだった。あわよくば大好きな女優モニカ・ベルッチの姿にお目にかかれればラッキーだったのだ。だがある日、使徒役として最後の晩餐の撮影に出られたしと連絡があった。日当は70ユーロ。
「光栄に思った....そうなるともう金は問題じゃない。それにモニカに会えるかもというのが現実になったからね。でなきゃこんな哀れな男に声をかけてもらえるかい? 監督に大感謝だ!(笑)」

Mel Gibson arrives at the location for Last Supper
撮影地に到着 All photos by Antonio Genovese for the Gazzeta.

素晴らしい冒険とチャンスを物にしたのは41才のやはり役人であるロザーリオにとっても同じだ。
「友達がキャスティング関係者だったんだ。写真を撮られて決心がつかないうちに使徒にされてしまった(笑)でも今は幸福感でいっぱいだ。感動的なセットでこんな経験ができるってめったにないことだからね」と振りかえる。

僕は身長が186cmあってテーブルの下に足をおさめるのがちょっと難儀だった...高さがたった50cmしかなかったからね。できるだけベストをつくして何とか足をおさめていたが、場面の最高頂、いちばん感動的な場面って時に足がつってしまって...痛みは相当強烈だったんだが、撮影を止めてくれとは言わなかった。でも痛みを我慢してるのが顔に出ててまずいと思ったし、カメラマンも気がついていた...だが最後までカメラを回して、終わった時にこう言ってくれた;完璧な演技だったねって。こむら返しが僕を素晴らしい役者にしたんだ!あとでメルもモニターを見てたけど別に変だと思ってなかったようだし(笑)」

完成が楽しみだ。彼らのショットのどれ一つカットされないように祈ろう。


English translation by Robi. Thanks!

Mel on the COVER

BRAVEHEART

Happy 15th Anniversary

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Variety, USA 1995
Variety, USA 1995

新しい年を迎えた。2010年。皆様におかれてもさらに良き年になりますよう。

日付けは1月2日になってるが、もう3日。1月3日と言えばメル・ギブソンの誕生日。「おめでとう、メル!」のついでに毎年この日に新年のご挨拶をしてる(^^)。

 

メル・ギブソンのファンサイトを運営する私にとっては、今年は楽しみが多い。公開を控えた2本の主演映画、監督するのが決まってるもの1本、春頃開始の主演作1本と久方ぶりに映画人メルがおおいに動く。できるだけ追っていきたいと思うが、また今年はたった4ページから初めた本サイトの10周年、さらにWhat Women Want 「ハート・オブ・ウーマン」のロスアンジェルスプレミアに幸運にも参加でき、幸運にも生身のメルギブソンに会えた記念すべき出来事の10周年も迎える。

10周年?! なんてこと、紀行文はそのうち書きます...などと言いつつ忙しさにかまけ、さぼってたら10年! 最近ひとしお思う。地球の自転が実は密かに速くなってるんじゃないかと....大昔古代マヤ人が予言してたのはこの事じゃないかと。しかし嘆いても仕方ない。自転は停まってくれないだろうし、やることはいっぱい。せめて10周年記念として上記プレミア紀行文でもアップしよう。

 

さて去年の暮れ続けてジャンルは同じ恋愛ドラマになるだろうが、全く毛色の違う2本を観た。ひとつは鑑賞券を得て久しぶりの劇場でロードショウとして、サンドラ・ブロック主演The Proposal「あなたは私の婿になる」を楽しんだ。

S・ブロックは好きな女優の一人だ。いったい美人なのかセクシーなのかよくわからない雰囲気が気に入ってる。コメディでは笑わせてくれるし、筋肉質に近い体つきに見えるがグラマラスなのもいい。

やり手のカナダ人キャリアウーマンがヴィザの更新ができないため、とっさに部下の若い男との偽装結婚を思いつき、彼の実家に行くはめになりドタバタが始まる。大都会シカゴからおおらかなアラスカに行くくだりは傑作。そこに行って部下の実家が土地の素封家でお屋敷のような家を見て驚くブロックの演技も最高。

しばらく見ればもう結末は推して知るべし。アメリカのロマンチック・コメディなら複雑な筋立てなし、不幸な結末なし、スピーディな演技とファニーな台詞、一人か二人の意地悪な妨害役...と約束通りの展開で、それでもブロックのうまいコメディエンヌぶりがおおいに笑いを誘い、ハンサムな相方、ライアン・レイノルズがちょっとすっとぼけた人のいい役回りで、あれよあれよと言う間に二人は本物の恋に陥る。ところでこのレイノルズ、確かにいわゆるイケメンで日本の女の子好みのように感じられたが、残念、私の好みじゃない。40歳くらいになったらどうかな。

安心して座席に身を預けられる映画の典型だ。問題提起や意識を刺激される事もあまりない。単純に楽しむ映画。この手の映画はアメリカならではだろう。アメリカの観客のためのアメリカ的ロマンスもの。以下に書くフランスの恋愛映画なんてきっとアメリカじゃはやらないだろう。

 

1962年フランス/イタリア合作 Le Repos Du Gerriere 「戦士の休息」。すでに別れてはいたが、妻だったブリジット・バルドーを主演に迎えたロジェ・バディム監督作品。同じ恋に陥っていく男女を描いてもこうも違うのかとあらためてフランス映画の妙を見せつけられた思い。この映画は昔一度劇場で見て、BB(ベベ)のふくれっ面の愛らしさにうっとりし、音楽の美しさに魅了されたのを覚えてて、今回ふと思い出しレンタルしたのだが、当時「戦士の休息」(原題通りの訳)と言うタイトルの意味するところが当時よくわからなかった。

偶然に出会った男に惹かれ一緒に暮らし始めるが、この男が何か病理的な暗さを持ち、不実なのだ。フランス映画、特に恋愛ものはアメリカの言ってみればわかりやすく結末まで読めてしまうようなプロットの作りよりも、なぜだかわざわざこちらをイライラさせるような演出や脚本になってる事が多い。実はそういうところも含めてフランス映画が好きなのだが、アメリカ的ストーリー展開に慣れてしまうと、とても不自然に感じられるかもしれない。

しかし実際の男女の心の機微とは単純なものではないし、はたからみれば不自然な行動や言動がつきものだ。この映画もそういう意味では単純でなく自然でない。つまり二人は知ってか知らずか心理的駆け引きをしてるのだ。駆け引きというより戦い。男が勝ってるように見えてその実、最後に笑うのは女。イタリアの廃墟の中で最後にBBにすがりついて愛を乞う男に対し、長い金髪を風になびかせ泰然と微笑むあのラストシーンがまさに戦い終えた戦士の休息なんだろう。つまり休息であってまだ戦いは続く...と匂わせる。男女の心の機微は尽きない。

2つの全く毛色の違う恋愛映画を見終わって、2つともそれなりに楽しめるが、私にとって心に残り、刺激を受け、女主人公になった妄想を楽しめるのは古くても不自然でも「戦士の休息」のようなフランス映画だなとあらためて認識した次第。

 


 

Last updated 10/23,2015

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