「最後の晩餐」のためにメル・ギブソンが選んだのはサン・ニコーラ・デイ・グレーチというマテーラの断崖を削って掘って作られた古い岩窟教会だ。
ベルナルダ生まれのミケーレ・ルッソとここマテーラ出身のアントニオ・ジノーザとロザーリオ・ガリアルディが12使徒の3人として主演のジム・カヴィーゼルとこの感動的な場面で共演を果たした。
イエスが12人の使徒達に説教をしている。有名な「最後の晩餐」の場面だ。3人はここで初めてジムに会った。12人の使徒を演じる俳優のうち本職の俳優と言えるのはたったの4人。ヨハネ役のブルガリア出身のリースト・イーフコフ、ペテロ役のイタリア人、ヤコブとトマスを演じる2人のアルジェリアの俳優。あとは近辺から募って選ばれた素人たちだ。ここマテーラからは3人(上記)も選ばれてこれは誇らしいことだ。だって監督はあのアメリカの有名なメル・ギブソンなんだから。
38才のミケーレは映画製作に関しては全くの素人じゃない。裏方としてコッポラをはじめいろんな監督のもとで働いたことがある。現に今コッポラのために小さいけど仕事中だった。だが彼によれば:
「自分の家の庭先のようなところでこんな偉大なプロジェクトが進行してるじゃないか....これに参加しなくては。参加することが何か運命みたいに感じたんだ。最初はなんでもいい自分の技が活かされればと思った。とにかくサインにこぎ着ければ....だからここに戻ってきた。サインできてとても幸せ」
「ジムは素晴らしい...とても気に入った。自分に割り当てられたことだけでなくいろんなことに気を配ってる。細心でとても几帳面だ。この映画をいいものにするために全霊を捧げてる。すごい集中力で。みんながハラハラするくらいだ。
メルは....愉快で快活な人だ。見てるだけでこっちも引きずり込まれてしまうね(^^)それと気がついたんだが...彼が怒ったりどなったりしたところを見たことがない」
59才のアントニオは普段はマテーラの役所に勤めてる。彼の容貌を見ればパレスティナから来たと言っても通るだろう。使徒役にぴったりだ。選ばれたのも無理はない。
「ジムがアラム語で話すのを初めて聞いた時は印象的だったね。たぶん回りの雰囲気と映画のテーマと古い言葉の持つ神秘的で深い響きのせいだと思うが、まさに自分達が2千年前の聖地にいると錯覚してしまったくらいだ.....信仰の有無にかかわらず、誰でも神秘的な想像心をかきたてられる雰囲気が上手く出ていた。映画だということすら一瞬忘れてたね」しばらく考えて続ける。
「撮影が終わった後ですら、ジムの様子は悲しそうで憂いに満ちていて常にイエスそのものだ。とても意識してるように見える。撮影に入る前は必ず小さな聖遺物にキスして心構えを整えている....感動的な姿だ」
アントニオの応募の動機は最初はただの好奇心からだった。あわよくば大好きな女優モニカ・ベルッチの姿にお目にかかれればラッキーだったのだ。だがある日、使徒役として最後の晩餐の撮影に出られたしと連絡があった。日当は70ユーロ。
「光栄に思った....そうなるともう金は問題じゃない。それにモニカに会えるかもというのが現実になったからね。でなきゃこんな哀れな男に声をかけてもらえるかい? 監督に大感謝だ!(笑)」
素晴らしい冒険とチャンスを物にしたのは41才のやはり役人であるロザーリオにとっても同じだ。
「友達がキャスティング関係者だったんだ。写真を撮られて決心がつかないうちに使徒にされてしまった(笑)でも今は幸福感でいっぱいだ。感動的なセットでこんな経験ができるってめったにないことだからね」と振りかえる。
「僕は身長が186cmあってテーブルの下に足をおさめるのがちょっと難儀だった...高さがたった50cmしかなかったからね。できるだけベストをつくして何とか足をおさめていたが、場面の最高頂、いちばん感動的な場面って時に足がつってしまって...痛みは相当強烈だったんだが、撮影を止めてくれとは言わなかった。でも痛みを我慢してるのが顔に出ててまずいと思ったし、カメラマンも気がついていた...だが最後までカメラを回して、終わった時にこう言ってくれた;完璧な演技だったねって。こむら返しが僕を素晴らしい役者にしたんだ!あとでメルもモニターを見てたけど別に変だと思ってなかったようだし(笑)」
完成が楽しみだ。彼らのショットのどれ一つカットされないように祈ろう。
English translation by Robi. Thanks!