Gallipoli  誓い (1981)

オーストラリア/アメリカ公開1981年/日本公開1982年/110分

CREDITS
監督・原案....ピーター・ウイアー
製作..............ロバート・スティグウッド、パトリシア・ロヴェル
脚本..............デイヴィッド・ウィリアムソン
撮影..............ラッセル・ボイド
編集..............ウィリアム・アンダーソン
音楽..............ブライアン・メイ
美術..............ウエンディ・ウィアー

 

CAST
Mel Gibson..............フランク・ダン
Mark Lee................アーチィ・ハミルトン
Bill Kerr.................アーチィの叔父ジャック
Charles Yunupingu...牧童ザック
Harold Hopkins........牧童レス
Bill Hunter..............バートン少佐
Tim McKenzie.........バーニー
Robert Grubb..........ビリー
David Argue............スノーウィー
John Murphy...........フランクの父
Graham Dow..........ガードナー将軍

MINI STORY
アーチィは毎日短距離走の練習に励みながら、遠いガリポリ戦線で戦う同胞に思いを馳せ入隊を夢みていた。かたやフランクは日雇い仕事仲間と戦争談議をするも彼は兵隊になる気はなかった。そんな対照的な二人が陸上競技会で出逢う。アーチイはここで入隊し家に帰るつもりはなかった。だが年が若すぎてはねられたのを聞いたフランクの勧めで、二人は仲良くフランクの故郷パースへと旅立つ。

 

無断乗車した汽車から灼熱の砂漠へ。この間二人は相入れないままずっと戦争について議論する。パースでアーチィは年をごまかし軽騎兵に合格するが試しに志願したフランクは馬に乗れず歩兵に。カイロでフランクは仲間と再会し、訓練に励むと同時に街に繰り出して店をひやかしたり、ピラミッドに登りっこしたりと楽しんでいるうちにとうとう出動命令が出る。ガリポリに渡った彼等を待ち受けていたのは、酷く厳しい戦争の現実だった。そして些細な間違いと無謀な作戦のもと多くの若者が倒れていくあの日を迎える....


NOTES
オーストラリアの人々にとってガリポリという名はアメリカ人にとってのパールハーバー、我々にとっての広島というように特別な感慨がある歴史的事件を意味する。この映画は1915年に起きた伝説的な軍事作戦の失敗が引き起こした何千にも及ぶオーストラリアとニュージーランドの若者の無益な死の責任を問うている。また当時の宗主国だったイギリスが参戦していた戦争にオーストラリア人(特にアイルランドとスコットランドからの移民の子孫)が出兵した事の意味も語りかけている。

 

大きく分けてふたつのパートで構成されている。前半は広大なオーストラリア西部が舞台の主人公の二人の出会いと冒険の物語で、この部分は特に素朴さとおおらかさとユーモアに溢れている。
片や大都会出身のいくぶんしたたかで現実主義的な青年、一方は田舎の牧場育ちで愛国心に満ち、戦争に参加する事に何の疑いも持ってない理想主義的な若者という取り合わせで、一種のロードムーヴィーの趣で進行していくのだがこの二人が最高にいい。アカデミー賞だったら二人にオスカーを渡すべきだといってもおおげさではない。

特に印象的なのは砂漠の横断シーンだ。オーストラリアの原始的で過酷な自然がここでもラッセル・ボイドのすばらしいカメラワークでとらえられており、時間が停止したような中を二人がひたすら歩く。
街育ちのフランクはぶつぶつ文句をいいながら、自分より年下のアーチィに叱咤激励されながら。行けども行けども何もないんだが、途中でラクダを伴った老人が出てくるところが愉快だ。やっぱり砂漠にはラクダが似合う。老人は戦争の事なんか全く知らず「ドイツ軍がここへ来たら歓迎してやろう!」とさらっと言うのだが、このシーンは痛烈な戦争批判だと思う。

 

エジプトのカイロで撮影された部分も勇壮なピラミッドや迷路のようなカイロの歓楽街を絡めて、俳優達が楽しんで仕事をした様子が伝わって来る。ピラミッドまで二人でかけっこをして勢いでてっぺんまで登ってしまう! 陽気でおおらかでユーモラスなのは舞台がいよいよガリポリに移り、敵の砲弾がビュンビュン飛んでくるような前線でさえ止む事はない。だがここでメルの表情がだんだん変わってきてる事に気がつく。少しずつ顔つきが硬くなっていく。このあたりTimで評価された微妙で複雑な表現力が十二分に発揮されている。
驚きなのはアーチィがこの期に及んでもいまだ理想観を維持し、死ぬ事を恐がりもせずむしろ慈悲深いとも言える表情で友を見守る。この若さでだ。それが結末が想像できるだけに健気で痛々しい。目頭が熱くなってくるシーンだ。
死を覚悟した若い兵達が最後の突撃の前、祈ったり手紙をしたためたりする一時静寂の中、メルだけが走る。自軍の命運をかけた疾走、それが間に合わなかったと知った時の絶望と絞るような叫びはこちらもいたたまれなくなる。
ポイントごとに効果的に使われているクラシック(アルビノーニのアダージョなど)には改めてウィアー監督のセンスの良さを感じた。

多くの人がガリポリなんて聞いた事のないアメリカでもこの映画は控えめながらヒットして、 " 若くてハンサムで青い目が綺麗なメル "の存在を特に女性達に知らしめ、またハリウッドのプロデューサーにはスター性のある新鮮な俳優が登場したと印象づけた記念すべき映画だ。

 

その他にも、エジプトに遠征中に初めての子供が生まれ(メルは誕生に立ち会えなかった事を今でも残念に思ってるそうだ)、後に共同でアイコン・プロダクションズを起こす事になるブルース・デイヴィと知り合ったのもこの頃。またメルはもとから運動は得意だったそうだが今回は短距離走の大特訓とウェイトリフティングのトレーニングを強いられた。おかげで後のLethal Weaponシリーズなどでの走る演技に大いに役立った。メルにとってもファンにとってもこの映画は特別だ。
共演のマーク・リーも忘れがたい演技をして負けていない。子役からの長いキャリアを持つ俳優だが長篇映画はこれが初めて。現在もオーストラリア映画に出演、製作で活躍している。

QUOTES
「髪の毛からつま先まで完全にこの映画に包まれているのを強く感じてた。真実と誠実な人間関係を手に入れれば、どんな苦労も厭わないでできる。これにはその両方があった.....これに関わる全ての経験はとても楽しかったけど一つだけ最悪なのはオーストラリアの砂漠にはとんでもない毒グモがいてね。噛まれたらあっという間にあの世行き。黒くてデカくて毛むくじゃらで攻撃的なやつ。そこら中にいるんだぜ....(笑)」____メル・ギブソン

 

「僕ら二人とも学校で習った以上の事はガリポリについて知らなかった。あそこから生き残った人がまだ存命で二人で話を聞いたり本を読んだりして、この映画は何が何でも作り上げなくちゃと使命感みたいなものを強く感じた。毒グモのことだけど、そんなもん僕は見なかったし聞いた事もないよ(笑)  

短距離競争は映画では僕が勝ったけど実際にはメルの方がずっと速い。本物のスプリンターだね。ピラミッドに登るのも簡単にやってたよ。ただ馬だけは怖がってた。もちろん本番ではそんな風には全然見えないけどね(笑)」____マーク・リー

 

「私もプロデューサーのロヴェルもMad Maxのメルを見て強い感銘を受けた。彼を起用する事は全員一致の共通項で何の問題もなかった。メルはいわば磨かれる前のダイアモンドって感じだった」____ピーター・ウイアー

 

AWARDS

AFI Awards (サミー賞)受賞
最優秀作品賞/監督賞/主演男優賞メル・ギブソン/助演男優賞ビル・ハンター/

撮影賞/オリジナル脚本賞/編集賞/音響賞

 

A.C.S(オーストラリア映画撮影家協会)Awards受賞   

ラッセル・ボイド

 

AFI Awardsノミネート 

美術賞/衣装賞/助演男優賞マーク・リー、ビル・カー

 

Golden Globe Awards 最優秀外国映画賞ノミネート

 

WEBSITE
crazydv's Gallipoli page
映画を総合的に扱った唯一と言っていいホームページでぜひお気に入りに。実際にはピーター・ウイア-監督作品を集めたオーストラリアの個人サイトの一部。画像も多く、Memorable scenesでは印象的な場面の台詞と写真が見やすくまとめられている。リンクからは歴史的にガリポリ戦線を取り上げたサイトや記事、ディスカッションサイトにいける。

 

 

Mel on the COVER

BRAVEHEART

Happy 15th Anniversary

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Variety, USA 1995
Variety, USA 1995

新しい年を迎えた。2010年。皆様におかれてもさらに良き年になりますよう。

日付けは1月2日になってるが、もう3日。1月3日と言えばメル・ギブソンの誕生日。「おめでとう、メル!」のついでに毎年この日に新年のご挨拶をしてる(^^)。

 

メル・ギブソンのファンサイトを運営する私にとっては、今年は楽しみが多い。公開を控えた2本の主演映画、監督するのが決まってるもの1本、春頃開始の主演作1本と久方ぶりに映画人メルがおおいに動く。できるだけ追っていきたいと思うが、また今年はたった4ページから初めた本サイトの10周年、さらにWhat Women Want 「ハート・オブ・ウーマン」のロスアンジェルスプレミアに幸運にも参加でき、幸運にも生身のメルギブソンに会えた記念すべき出来事の10周年も迎える。

10周年?! なんてこと、紀行文はそのうち書きます...などと言いつつ忙しさにかまけ、さぼってたら10年! 最近ひとしお思う。地球の自転が実は密かに速くなってるんじゃないかと....大昔古代マヤ人が予言してたのはこの事じゃないかと。しかし嘆いても仕方ない。自転は停まってくれないだろうし、やることはいっぱい。せめて10周年記念として上記プレミア紀行文でもアップしよう。

 

さて去年の暮れ続けてジャンルは同じ恋愛ドラマになるだろうが、全く毛色の違う2本を観た。ひとつは鑑賞券を得て久しぶりの劇場でロードショウとして、サンドラ・ブロック主演The Proposal「あなたは私の婿になる」を楽しんだ。

S・ブロックは好きな女優の一人だ。いったい美人なのかセクシーなのかよくわからない雰囲気が気に入ってる。コメディでは笑わせてくれるし、筋肉質に近い体つきに見えるがグラマラスなのもいい。

やり手のカナダ人キャリアウーマンがヴィザの更新ができないため、とっさに部下の若い男との偽装結婚を思いつき、彼の実家に行くはめになりドタバタが始まる。大都会シカゴからおおらかなアラスカに行くくだりは傑作。そこに行って部下の実家が土地の素封家でお屋敷のような家を見て驚くブロックの演技も最高。

しばらく見ればもう結末は推して知るべし。アメリカのロマンチック・コメディなら複雑な筋立てなし、不幸な結末なし、スピーディな演技とファニーな台詞、一人か二人の意地悪な妨害役...と約束通りの展開で、それでもブロックのうまいコメディエンヌぶりがおおいに笑いを誘い、ハンサムな相方、ライアン・レイノルズがちょっとすっとぼけた人のいい役回りで、あれよあれよと言う間に二人は本物の恋に陥る。ところでこのレイノルズ、確かにいわゆるイケメンで日本の女の子好みのように感じられたが、残念、私の好みじゃない。40歳くらいになったらどうかな。

安心して座席に身を預けられる映画の典型だ。問題提起や意識を刺激される事もあまりない。単純に楽しむ映画。この手の映画はアメリカならではだろう。アメリカの観客のためのアメリカ的ロマンスもの。以下に書くフランスの恋愛映画なんてきっとアメリカじゃはやらないだろう。

 

1962年フランス/イタリア合作 Le Repos Du Gerriere 「戦士の休息」。すでに別れてはいたが、妻だったブリジット・バルドーを主演に迎えたロジェ・バディム監督作品。同じ恋に陥っていく男女を描いてもこうも違うのかとあらためてフランス映画の妙を見せつけられた思い。この映画は昔一度劇場で見て、BB(ベベ)のふくれっ面の愛らしさにうっとりし、音楽の美しさに魅了されたのを覚えてて、今回ふと思い出しレンタルしたのだが、当時「戦士の休息」(原題通りの訳)と言うタイトルの意味するところが当時よくわからなかった。

偶然に出会った男に惹かれ一緒に暮らし始めるが、この男が何か病理的な暗さを持ち、不実なのだ。フランス映画、特に恋愛ものはアメリカの言ってみればわかりやすく結末まで読めてしまうようなプロットの作りよりも、なぜだかわざわざこちらをイライラさせるような演出や脚本になってる事が多い。実はそういうところも含めてフランス映画が好きなのだが、アメリカ的ストーリー展開に慣れてしまうと、とても不自然に感じられるかもしれない。

しかし実際の男女の心の機微とは単純なものではないし、はたからみれば不自然な行動や言動がつきものだ。この映画もそういう意味では単純でなく自然でない。つまり二人は知ってか知らずか心理的駆け引きをしてるのだ。駆け引きというより戦い。男が勝ってるように見えてその実、最後に笑うのは女。イタリアの廃墟の中で最後にBBにすがりついて愛を乞う男に対し、長い金髪を風になびかせ泰然と微笑むあのラストシーンがまさに戦い終えた戦士の休息なんだろう。つまり休息であってまだ戦いは続く...と匂わせる。男女の心の機微は尽きない。

2つの全く毛色の違う恋愛映画を見終わって、2つともそれなりに楽しめるが、私にとって心に残り、刺激を受け、女主人公になった妄想を楽しめるのは古くても不自然でも「戦士の休息」のようなフランス映画だなとあらためて認識した次第。

 


 

Last updated 10/23,2015

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