Introduction (2002 11/9 記)
メル・ギブソン10年余の構想を経てイエス・キリストの映画でメガホンをとる!!! ...と、まあ映画ニュースの見出し風に始めてみたが、実際Braveheartから数えて7年ぶりの待望の監督3作目。2002年秋イタリアで撮影が始まったばかりで(2003年4月に撮影完全終了、2004年世界公開)メルは監督、製作、そして今回は共同で脚本も書いたという。これは大きなニュース。映画は脚本があって初めて始まるものだもの。今までにもましてメルの自作という色が濃くなるだろう。さらにさらに彼は映画作りに関してその貢献度を増す事にもなった。
The Passionとはこの場合「イエス・キリストの受難」を意味する言葉だが、同時にメルの映画作りに対する「情熱」をも表していると感じる。こうやって特別にページを作ってみたいという衝動を起させるに十分なメルの情熱。
誰がイエスに? 白羽の矢が当たったのはまさにピッタリじゃないかと思えるジム・カヴィーゼル。The Thin Red Lineの主役での演技を見れば、なるほどとうなずける思う。彼以外はモニカ・ベルッチを始めとする主にイタリアなどヨーロッパのベテランたちで固められた。撮影地やスタッフたちもイタリアに集中している。
そのタイトルどおりこの映画はおおまかにいえば ( 回想場面で子供時代や過去のシーンが出て来るらしいが)イエスの人生の最後の12時間に絞られているということだ。キリスト教徒でなくとも全世界のたくさんの人はその生涯のだいたいのお話を知ってるだろう。この普遍的な話をメルがどう脚本化したのか....。
今思えば兆候....メルがイエス・キリストに関わる映画を作るかもしれないというサイン....はあったような気がする。10年くらい前から頻繁にイタリアに行ってた。単なるバカンスとしてだけじゃなく、何か映画に関わる物を心に秘めて。何かを書いているとも漏らしてたし。そして最近「誰もが関わりたくないと思うような作品を練っている....だからこそ自分がやりたい」という暗示めいた告白もしてた。あ、これはもう政治か宗教関係の映画しかないだろうなとピンときたが。
だいたいこじつけるならBraveheart。あの頃たくさんのインタビューを受けてたが、そんな中でこんな事を言ってる。「(主人公の)ウィリアム・ウァレスは分析するならどちらかと言えばキリストやチェ・ゲバラのタイプだ....」
武器を持たなかった指導者としてとらえるなら、ナザレのイエスはその最右翼と言えるだろう。メルが映像化したいと思ってもなんら不思議でも驚きでもない。それに彼は知る人ぞ知るカトリック教徒でもある。カリフォルニアの私有地に私設チャペルを設け、伝統主義にのっとっていまだにラテン語で礼拝を行なってるという。だがキリスト教の教義や講釈はここではおいといて、メルが人類歴史上でも最も有名な人物のひとりを彼の視点でどう表現するか。興味は尽きない。
ところで何よりも彼の視点はリアリズムだということはわかるが、記者会見でこの映画はラテン語とアラム語でなされとりあえず英語字幕もつけないと発表した時だけは正直びっくりした。これが一番の特徴、それもかなりユニークな特徴になる事は間違いない。最初に思った事....演じる俳優が大変そう。
この辺のことはメル自身の言葉を読めば、たとえこのせいで配給が難しくなってもなぜそれにこだわるか少しは分かるだろう。
何はともあれ大いに見守っていく価値はあると思う。なんといってもメル自身の頭の中から出てきたものなんだから。(2002 11/9記)
Image of Jerusalem gate(top) was depicted by Carinya, based upon the photo taken by Francesco and Donato in Matera, Italy.
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