もちろん人名であるんだが、この人の名が連想させるものは「名は態を表す」という言い回しにまさにぴったり。つまり;
mellow, mellifluous, melting, melange, melodiousな人だ。そして「陽気な性格の持ち主だが同時にmelancholicな面も持っている。複雑な人物」と言うのは「テキーラサンライズ」で彼を演出したロバート・タウン監督。まだある。M.E.Lつまり英文学修士。むろん彼はそんなものを修めてはいない。が、父親譲りでかなりの本の虫。古典にも相当明るいというから文字どおりマスターといっていいだろう。
こんなことを連想させたのは、「危険な年」で共演したシガニー・ウィーヴァーが彼に一目惚れして、あげくこんなことを言ったのを目にしたから。
"He is so MEL! " ん? MELって何?
MELとは本人いわく、「Melvinとかを縮めたんじゃなく単にMelなんだ。アイルランドの古い人名であそこには聖メル大聖堂ってのがちゃんとあるよ」西洋人のキリスト教徒ならその名は遡ればだいたい昔の聖人。聖メルは5世紀頃、今のロングフォード州のあたりで布教していた人。そしてここはメルの母親の出身地でもある。
"Mel"は英語表記であって、もともとのアイルランド語ではその意味は......「歓び」という。
映画を作る歓び、生きる歓び。何よりも家族を愛する歓び。ここ10年ほどのメルからはそれがひしひしと伝わってくる。若い時はmelancholicな部分を隠さず、それを紛らわすためにけっこう荒れていたと言う。若い時の彼をスクリーンで見るのも好きだが、年とともに渋くなって円熟味を増した今の彼はさらにさらに魅力的。
メル自身がこんなうまいことを言っている;「時は素晴らしい味方だ。少なくともそれは認めなくちゃ。チーズやワインが熟成していい味になるのと同じさ。役者も....もし僕がチーズならうまく熟れ始めてぼちぼち食べごろだからね(^^)でもワインだとしたらまだまだ僕をワインセラーで寝かせておけるよ」■