Tim (1979)

オーストラリア/アメリカ公開81年9月/日本未公開/90分

CREDITS
監督.................マイケル・ペイト
製作・脚本.......マイケル・ペイト
原作.................コリーン・マカラフ("Tim")
撮影..................ポール・オノラート
音楽..................エリック・ジュップ


CAST
Piper Laurie.............メアリー・ホートン
Mel Gibson.................ティム・メルヴィル
Alwyn Kurts..............ティムの父、ロン
Pat Evison..................ティムの母、エム
         Deborah Kennedy........ティムの姉、ドーニィ
         Peter Gwynne............トム・エインズリー
         David Foster.............ミック・ハリントン

MINI STORY
なりは大人だが少し知恵おくれのティムは、物事を疑う事も知らず仲間や大人にからかわれたりするが、両親と姉の愛情に守られていた。近所に住む孤独で仕事一徹の中年女性メアリーの庭仕事を手伝うことになり、彼女ははじめは戸惑いながらも、辛抱強く彼に知性を授けようと暖かい態度で接していくうちに、ティムの純真な心に打たれ二人は愛しあうようになる。だが母の突然の死や、結婚を控えた姉との確執。それでも二人は年令の差や偏見を越え、父親の理解を得て結ばれる......

 

 

NOTES

これはメルの出演作のうちでもベストの一本だと断言できるが、明らかに女性の視点からみたストーリー、つまりメアリーの愛の発見の物語だと思う。おそらく恋愛経験はあるだろうが仕事を選び、それ以外は自分の人生から閉め出した雰囲気をそこはかとなく漂わせている。それでいてまだ切り捨てたものに未練はあり、だが知性がそれを押さえているといった演出がうまくさり気なくはめ込まれている。

パイパー・ローリー(「ハスラー」「キャリー」)が選ばれたいきさつは第一候補だったジュリー・ハリス(「エデンの東」)が都合で出演できなくなり、代わりに急きょ選ばれたと言う事だが、この人選はあたりだ。ティムを単なる知的障害を持つ子供のように見て戸惑う始まりから、次第に自分の中の母性、そして閉じ込めていた女性が出てきて恥じらいを示す辺りの演技はとても愛おしい。それに応えるメルの演技は障害者を扱う作品にありがちな気負いやてらいが微塵もなくごく自然で暗さも全くないおかげで、見る方に負担を与えない。人の死や不和などちゃんと「転」の場面もあるが、いつもいつもそこには汚れないティムがいて、無意識のうちにパンドラの箱のふたを閉める役目をしている。そしてその演技は心を強く打ち忘れられないものになった。二人が結ばれた翌朝、歓びを伝える涙と台詞にはまいってしまう。 メル映画の中でも特に忘れられないシーンだ。

 

監督のペイトは彼の息子で俳優のクリストファーのためにシナリオを書いたのだが、念のためにスクリーンテストに喚ばれた大勢の中にメルがいた。その時はまだMad Maxは封切りされていなかったために、やがて定着するアクションヒーローというイメージと、ティムにまつわるペースの変わる複雑な役柄とが張り合わないですんだということで、メルにとっても幸運だったかもしれない。なぜなら彼の演技の幅の広さを早いうちに見事に証明できたからだ。

 

だが残念な事にこの秀作は日本では劇場公開されなかった。当時の特に日本ではMel=Maxの図式しかなかったみたいだ。オーストラリア映画というのも今ほど馴染みがなく、極めて地味なものというイメージがあり(Mad Maxですら最初はオーストラリア作品という事を隠して宣伝しようとしたと言うんだから、何をかいわんやである)映画も商品だからしかたないが、それにしてもどうしてアクション映画があたるとその俳優は、即アクションスター以外の何ものにもならなくなるんだろう?

 

 

QUOTES
荒削りなところはたくさんある。でもそれ以上にたくさんのハートが詰まっている____メル・ギブソン

初めてメルを見た時、彼が小柄なので私の読んだティムのイメージと違うという違和感があった。それに彼はとても内気そうで緊張してた。無理もないと思う。まだ彼は新人で、パイパーは国際的な女優だし私やAlwynはオーストラリアでは既に有名な舞台俳優だったから。でも読み合わせ、そして撮影に入ると別人ね。完璧なティム。本当の息子の様に思えてしょうがなかった。ほどなく彼もリラックスしてきて、そうしたらとんでもないジョークやユーモアでずいぶん笑わせられたわ! 難しい役なのに彼は楽にやってた......」____パット・エヴィソン(母親役) 

 

AWARDS
オーストラリア映画協会賞(AFI Awards, 通称サミー賞)
主演男優賞 メル・ギブソン/助演男優賞 アルウィン・カーツ/助演女優賞 パット・エヴィソン

 

Mel on the COVER

BRAVEHEART

Happy 15th Anniversary

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Variety, USA 1995
Variety, USA 1995

新しい年を迎えた。2010年。皆様におかれてもさらに良き年になりますよう。

日付けは1月2日になってるが、もう3日。1月3日と言えばメル・ギブソンの誕生日。「おめでとう、メル!」のついでに毎年この日に新年のご挨拶をしてる(^^)。

 

メル・ギブソンのファンサイトを運営する私にとっては、今年は楽しみが多い。公開を控えた2本の主演映画、監督するのが決まってるもの1本、春頃開始の主演作1本と久方ぶりに映画人メルがおおいに動く。できるだけ追っていきたいと思うが、また今年はたった4ページから初めた本サイトの10周年、さらにWhat Women Want 「ハート・オブ・ウーマン」のロスアンジェルスプレミアに幸運にも参加でき、幸運にも生身のメルギブソンに会えた記念すべき出来事の10周年も迎える。

10周年?! なんてこと、紀行文はそのうち書きます...などと言いつつ忙しさにかまけ、さぼってたら10年! 最近ひとしお思う。地球の自転が実は密かに速くなってるんじゃないかと....大昔古代マヤ人が予言してたのはこの事じゃないかと。しかし嘆いても仕方ない。自転は停まってくれないだろうし、やることはいっぱい。せめて10周年記念として上記プレミア紀行文でもアップしよう。

 

さて去年の暮れ続けてジャンルは同じ恋愛ドラマになるだろうが、全く毛色の違う2本を観た。ひとつは鑑賞券を得て久しぶりの劇場でロードショウとして、サンドラ・ブロック主演The Proposal「あなたは私の婿になる」を楽しんだ。

S・ブロックは好きな女優の一人だ。いったい美人なのかセクシーなのかよくわからない雰囲気が気に入ってる。コメディでは笑わせてくれるし、筋肉質に近い体つきに見えるがグラマラスなのもいい。

やり手のカナダ人キャリアウーマンがヴィザの更新ができないため、とっさに部下の若い男との偽装結婚を思いつき、彼の実家に行くはめになりドタバタが始まる。大都会シカゴからおおらかなアラスカに行くくだりは傑作。そこに行って部下の実家が土地の素封家でお屋敷のような家を見て驚くブロックの演技も最高。

しばらく見ればもう結末は推して知るべし。アメリカのロマンチック・コメディなら複雑な筋立てなし、不幸な結末なし、スピーディな演技とファニーな台詞、一人か二人の意地悪な妨害役...と約束通りの展開で、それでもブロックのうまいコメディエンヌぶりがおおいに笑いを誘い、ハンサムな相方、ライアン・レイノルズがちょっとすっとぼけた人のいい役回りで、あれよあれよと言う間に二人は本物の恋に陥る。ところでこのレイノルズ、確かにいわゆるイケメンで日本の女の子好みのように感じられたが、残念、私の好みじゃない。40歳くらいになったらどうかな。

安心して座席に身を預けられる映画の典型だ。問題提起や意識を刺激される事もあまりない。単純に楽しむ映画。この手の映画はアメリカならではだろう。アメリカの観客のためのアメリカ的ロマンスもの。以下に書くフランスの恋愛映画なんてきっとアメリカじゃはやらないだろう。

 

1962年フランス/イタリア合作 Le Repos Du Gerriere 「戦士の休息」。すでに別れてはいたが、妻だったブリジット・バルドーを主演に迎えたロジェ・バディム監督作品。同じ恋に陥っていく男女を描いてもこうも違うのかとあらためてフランス映画の妙を見せつけられた思い。この映画は昔一度劇場で見て、BB(ベベ)のふくれっ面の愛らしさにうっとりし、音楽の美しさに魅了されたのを覚えてて、今回ふと思い出しレンタルしたのだが、当時「戦士の休息」(原題通りの訳)と言うタイトルの意味するところが当時よくわからなかった。

偶然に出会った男に惹かれ一緒に暮らし始めるが、この男が何か病理的な暗さを持ち、不実なのだ。フランス映画、特に恋愛ものはアメリカの言ってみればわかりやすく結末まで読めてしまうようなプロットの作りよりも、なぜだかわざわざこちらをイライラさせるような演出や脚本になってる事が多い。実はそういうところも含めてフランス映画が好きなのだが、アメリカ的ストーリー展開に慣れてしまうと、とても不自然に感じられるかもしれない。

しかし実際の男女の心の機微とは単純なものではないし、はたからみれば不自然な行動や言動がつきものだ。この映画もそういう意味では単純でなく自然でない。つまり二人は知ってか知らずか心理的駆け引きをしてるのだ。駆け引きというより戦い。男が勝ってるように見えてその実、最後に笑うのは女。イタリアの廃墟の中で最後にBBにすがりついて愛を乞う男に対し、長い金髪を風になびかせ泰然と微笑むあのラストシーンがまさに戦い終えた戦士の休息なんだろう。つまり休息であってまだ戦いは続く...と匂わせる。男女の心の機微は尽きない。

2つの全く毛色の違う恋愛映画を見終わって、2つともそれなりに楽しめるが、私にとって心に残り、刺激を受け、女主人公になった妄想を楽しめるのは古くても不自然でも「戦士の休息」のようなフランス映画だなとあらためて認識した次第。

 


 

Last updated 10/23,2015

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