CREDITS
監督.................マイケル・ペイト
製作・脚本.......マイケル・ペイト
原作.................コリーン・マカラフ("Tim")
撮影..................ポール・オノラート
音楽..................エリック・ジュップ
CAST
Piper Laurie.............メアリー・ホートン
Mel Gibson.................ティム・メルヴィル
Alwyn Kurts..............ティムの父、ロン
Pat Evison..................ティムの母、エム
Deborah Kennedy........ティムの姉、ドーニィ
Peter Gwynne............トム・エインズリー
David Foster.............ミック・ハリントン
MINI STORY
なりは大人だが少し知恵おくれのティムは、物事を疑う事も知らず仲間や大人にからかわれたりするが、両親と姉の愛情に守られていた。近所に住む孤独で仕事一徹の中年女性メアリーの庭仕事を手伝うことになり、彼女ははじめは戸惑いながらも、辛抱強く彼に知性を授けようと暖かい態度で接していくうちに、ティムの純真な心に打たれ二人は愛しあうようになる。だが母の突然の死や、結婚を控えた姉との確執。それでも二人は年令の差や偏見を越え、父親の理解を得て結ばれる......
NOTES
これはメルの出演作のうちでもベストの一本だと断言できるが、明らかに女性の視点からみたストーリー、つまりメアリーの愛の発見の物語だと思う。おそらく恋愛経験はあるだろうが仕事を選び、それ以外は自分の人生から閉め出した雰囲気をそこはかとなく漂わせている。それでいてまだ切り捨てたものに未練はあり、だが知性がそれを押さえているといった演出がうまくさり気なくはめ込まれている。
パイパー・ローリー(「ハスラー」「キャリー」)が選ばれたいきさつは第一候補だったジュリー・ハリス(「エデンの東」)が都合で出演できなくなり、代わりに急きょ選ばれたと言う事だが、この人選はあたりだ。ティムを単なる知的障害を持つ子供のように見て戸惑う始まりから、次第に自分の中の母性、そして閉じ込めていた女性が出てきて恥じらいを示す辺りの演技はとても愛おしい。それに応えるメルの演技は障害者を扱う作品にありがちな気負いやてらいが微塵もなくごく自然で暗さも全くないおかげで、見る方に負担を与えない。人の死や不和などちゃんと「転」の場面もあるが、いつもいつもそこには汚れないティムがいて、無意識のうちにパンドラの箱のふたを閉める役目をしている。そしてその演技は心を強く打ち忘れられないものになった。二人が結ばれた翌朝、歓びを伝える涙と台詞にはまいってしまう。 メル映画の中でも特に忘れられないシーンだ。
監督のペイトは彼の息子で俳優のクリストファーのためにシナリオを書いたのだが、念のためにスクリーンテストに喚ばれた大勢の中にメルがいた。その時はまだMad Maxは封切りされていなかったために、やがて定着するアクションヒーローというイメージと、ティムにまつわるペースの変わる複雑な役柄とが張り合わないですんだということで、メルにとっても幸運だったかもしれない。なぜなら彼の演技の幅の広さを早いうちに見事に証明できたからだ。
だが残念な事にこの秀作は日本では劇場公開されなかった。当時の特に日本ではMel=Maxの図式しかなかったみたいだ。オーストラリア映画というのも今ほど馴染みがなく、極めて地味なものというイメージがあり(Mad Maxですら最初はオーストラリア作品という事を隠して宣伝しようとしたと言うんだから、何をかいわんやである)映画も商品だからしかたないが、それにしてもどうしてアクション映画があたるとその俳優は、即アクションスター以外の何ものにもならなくなるんだろう?
QUOTES
「荒削りなところはたくさんある。でもそれ以上にたくさんのハートが詰まっている」____メル・ギブソン
「初めてメルを見た時、彼が小柄なので私の読んだティムのイメージと違うという違和感があった。それに彼はとても内気そうで緊張してた。無理もないと思う。まだ彼は新人で、パイパーは国際的な女優だし私やAlwynはオーストラリアでは既に有名な舞台俳優だったから。でも読み合わせ、そして撮影に入ると別人ね。完璧なティム。本当の息子の様に思えてしょうがなかった。ほどなく彼もリラックスしてきて、そうしたらとんでもないジョークやユーモアでずいぶん笑わせられたわ! 難しい役なのに彼は楽にやってた......」____パット・エヴィソン(母親役)
AWARDS
オーストラリア映画協会賞(AFI Awards, 通称サミー賞)
主演男優賞 メル・ギブソン/助演男優賞 アルウィン・カーツ/助演女優賞 パット・エヴィソン