Scots Now この映画の影響と今のスコットランド

Mel Gibsonの代表的出演作になった映画BRAVEHEART('95)。封切り後スコットランド人をして英連邦からの自主独立を計るべく、独立議会設立ヘ向けての国民的プロパガンダにまで利用される程、彼等の血をたぎらせたその背景はファンならずとも、今さらながら「自由」という言葉の重みを考えさせられるのではないだろうか。と共に第一級娯楽作品としても十分に楽しめる作品だ。 

今でもスコットランドを中心にBraveheartersといわれる熱心なファン達がネット上で、途切れる事なく熱い思いを語り合っているくらいこの映画は、少なからず今のスコットランドに影響を与えたと言っても過言ではないだろう。Melの体内にも流れているScotsの血にまつわる話を以下に。

Mel Gibson in Kilt, 1995 エジンバラ城にて

1つの映画が1つの民族を動かした....というと少し大仰かもしれない。でもBraveheart公開後のスコットランドの動きを追ってみると全く関係がないとは言い切れない。この動きには政治が絡むので、いまのところメル側から直接コメントはないことをひとまず念頭に置いた上で, 現在も進行中の熱い出来事の数々をまとめてみた。私にとってこのことは映像の持つ測り知れないパワーを改めて感じさせてもくれた。(1999年記)

 

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ヨーロッパのどこよりも先駆けてエジンバラで一般公開前のプレミアショーが開かれたのは当然だとしても、その騒ぎは尋常ではなかった。
1995年9月3日。町中のありとあらゆる所、ありとあらゆるメディアにMel Gibson/William Wallaceが出没している。もちろんあの過激なスコットランド民族党のちらしにも。映画のプレミアなど珍しくはないが、映画にもゆかりのあるエジンバラ城での上映が始まる頃になるとバグパイプの演奏も手伝って、ここでの効果は一種独特なものになっている。

 

容易に推測できることだがもっぱら攻撃的なことで知られる民族主義的ジャーナリズムが、映画の主人公に負けずとも劣らずのエネルギーと熱狂と絶対の自信を持ってこの叙事詩を褒めちぎり、ギブソンに祝福を与え---ただしその論調は、この映画の程度ではまだまだてぬるいといういらだちも表して---おおいに民心をあおっているのも目につく。だがたとえそれがなくともスコットランドの人たちの心の中では未だに根強くウォレスの思い出が宿っているのだ。

 

いや、そんな古い話を持ち出すまでもない。メルの人気の高さはここだって例外じゃないのだ。だから彼がキルトを着て現れた時の人々の熱狂振りは想像がつくだろう。たっぷり3キロにわたる人で出来た垣根、女の子達の絶叫。ブリテン島内で今時こんなに女の子達が泣叫んだ所はない。

じゃ男達は? 彼等だって負けてはいない。ただそれが上っ面とは無縁の本物の素朴さで溢れていたということだ。彼等はほとんど抵抗無しにギブソンの演じたウォレスを受け入れた。ほとんど、というのははじめのうちはなぜ主演がスコットランド人じゃないんだという思いがあったからだ。

 

だが彼等がスクリーン上で見たものはそんな不満をぶっとばすほど強い共感を呼び起こす「平民」としての本物のウォレスだったのである。おそらくこの時点で男達の中に自主的に、英連邦からの独立という思いに再び火がともったのではないだろうか。
独立の動き自体は今に始まった事ではないが、ここしばらくは鳴りを潜めていた所へこの映画に刺激を受けた活動家や団体を中心に活発な運動が始まった。ここで暴動や流血騒ぎに至らなかったのは、ブレア首相の政策がうまく働いた事に尽きる。

彼と議会はまず、1296年にエドワード1世がスコットランドから奪った「聖なるスクーンの石」を女王の玉座からはずして返還した。今はエジンバラ城で一般公開されている。

 

さらにスコットランドの観光事業の振興に貢献する事を期待してBraveheartをテーマとした観光宣伝用に10万ポンドを計上した。英連邦内の地方分権拡充政策の一つとしてスコットランド独立議会設立の住民投票が行われたのは、ウォレスがイングランド軍を破ったスターリングの勝利の日からぴったり700年後の1997年9月11日。この時点でも2年前に公開された時と同じくらいこの映画はホットだった。映画館、テレビ、ビデオどれをとっても人気は衰えず人々は喜んで何度も見た。

 

Wallace statue inspired from Braveheart

投票前、国中にギブソンの顔とFREEDOMの文字が書かれたポスターが溢れ、パブでは映画の話題が再び盛り上がる。あげくの果てにウォレスモニュメントがそびえる丘のふもとに最新のウォレスの石像が置かれた。だが今までの像と違ってどこから見てもギブソンそっくりなことについて作者のトム・チャーチはいう。「そうだよ、でも愉快だろう?  Bravheartを見て強く触発された。この映画に捧げなくては、と思わずにいられなかった...」

 

投票の結果70%以上の支持を得て2000年から独立した議会による自治がいよいよ始まる。完全な独立への初めの一歩を踏み出したばかりでこれから解決していかなくてはならない問題も少なくない。だがスコットランドの人々の中に熱い火がついた事だけは確かだ。


ギブソン自身はこれらについては直接コメントは出してない。議会設立式典への招待も断っている。だが他の関係者は自分達の成した事の影響に少なからずショックを受けているようだ。「たくさんの人からメッセージをもらった。君が書いて映画になってスコットランドは今自由になった、と」原作者で脚本も書いたランダル・ウォレスはいう。「でも政治的立場に巻き込まれてるわけじゃない。もとからあったんだ。映画は単にそれを早めただけだと思う」と控えめな発言に留めている。ギブソンもきっと同じ事をいうだろう。

 

内外、特にイギリスでは独立へのこうした動きを懸念する声も大きい。現代のウォレス達がいかに賢明かはこれからを待つことになるが、個人的には完全な独立を密かに願っている。なぜならこの映画がみんなを動かしたんだと、勝手に信じているから。私にとってもこの映画は歴史、国家、自由、独立、民族...等、今までにも増して深く考えさせてくれた。メルの情熱に乾杯、である。

 

「僕はアイルランド人だが、スコットランドが独立のために立ち上がるんだったら、いつでも喜んで応援に行くつもりだ」---海外のBraveheartサイトの掲示板から

 

 

Mel on the COVER

BRAVEHEART

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Variety, USA 1995
Variety, USA 1995

新しい年を迎えた。2010年。皆様におかれてもさらに良き年になりますよう。

日付けは1月2日になってるが、もう3日。1月3日と言えばメル・ギブソンの誕生日。「おめでとう、メル!」のついでに毎年この日に新年のご挨拶をしてる(^^)。

 

メル・ギブソンのファンサイトを運営する私にとっては、今年は楽しみが多い。公開を控えた2本の主演映画、監督するのが決まってるもの1本、春頃開始の主演作1本と久方ぶりに映画人メルがおおいに動く。できるだけ追っていきたいと思うが、また今年はたった4ページから初めた本サイトの10周年、さらにWhat Women Want 「ハート・オブ・ウーマン」のロスアンジェルスプレミアに幸運にも参加でき、幸運にも生身のメルギブソンに会えた記念すべき出来事の10周年も迎える。

10周年?! なんてこと、紀行文はそのうち書きます...などと言いつつ忙しさにかまけ、さぼってたら10年! 最近ひとしお思う。地球の自転が実は密かに速くなってるんじゃないかと....大昔古代マヤ人が予言してたのはこの事じゃないかと。しかし嘆いても仕方ない。自転は停まってくれないだろうし、やることはいっぱい。せめて10周年記念として上記プレミア紀行文でもアップしよう。

 

さて去年の暮れ続けてジャンルは同じ恋愛ドラマになるだろうが、全く毛色の違う2本を観た。ひとつは鑑賞券を得て久しぶりの劇場でロードショウとして、サンドラ・ブロック主演The Proposal「あなたは私の婿になる」を楽しんだ。

S・ブロックは好きな女優の一人だ。いったい美人なのかセクシーなのかよくわからない雰囲気が気に入ってる。コメディでは笑わせてくれるし、筋肉質に近い体つきに見えるがグラマラスなのもいい。

やり手のカナダ人キャリアウーマンがヴィザの更新ができないため、とっさに部下の若い男との偽装結婚を思いつき、彼の実家に行くはめになりドタバタが始まる。大都会シカゴからおおらかなアラスカに行くくだりは傑作。そこに行って部下の実家が土地の素封家でお屋敷のような家を見て驚くブロックの演技も最高。

しばらく見ればもう結末は推して知るべし。アメリカのロマンチック・コメディなら複雑な筋立てなし、不幸な結末なし、スピーディな演技とファニーな台詞、一人か二人の意地悪な妨害役...と約束通りの展開で、それでもブロックのうまいコメディエンヌぶりがおおいに笑いを誘い、ハンサムな相方、ライアン・レイノルズがちょっとすっとぼけた人のいい役回りで、あれよあれよと言う間に二人は本物の恋に陥る。ところでこのレイノルズ、確かにいわゆるイケメンで日本の女の子好みのように感じられたが、残念、私の好みじゃない。40歳くらいになったらどうかな。

安心して座席に身を預けられる映画の典型だ。問題提起や意識を刺激される事もあまりない。単純に楽しむ映画。この手の映画はアメリカならではだろう。アメリカの観客のためのアメリカ的ロマンスもの。以下に書くフランスの恋愛映画なんてきっとアメリカじゃはやらないだろう。

 

1962年フランス/イタリア合作 Le Repos Du Gerriere 「戦士の休息」。すでに別れてはいたが、妻だったブリジット・バルドーを主演に迎えたロジェ・バディム監督作品。同じ恋に陥っていく男女を描いてもこうも違うのかとあらためてフランス映画の妙を見せつけられた思い。この映画は昔一度劇場で見て、BB(ベベ)のふくれっ面の愛らしさにうっとりし、音楽の美しさに魅了されたのを覚えてて、今回ふと思い出しレンタルしたのだが、当時「戦士の休息」(原題通りの訳)と言うタイトルの意味するところが当時よくわからなかった。

偶然に出会った男に惹かれ一緒に暮らし始めるが、この男が何か病理的な暗さを持ち、不実なのだ。フランス映画、特に恋愛ものはアメリカの言ってみればわかりやすく結末まで読めてしまうようなプロットの作りよりも、なぜだかわざわざこちらをイライラさせるような演出や脚本になってる事が多い。実はそういうところも含めてフランス映画が好きなのだが、アメリカ的ストーリー展開に慣れてしまうと、とても不自然に感じられるかもしれない。

しかし実際の男女の心の機微とは単純なものではないし、はたからみれば不自然な行動や言動がつきものだ。この映画もそういう意味では単純でなく自然でない。つまり二人は知ってか知らずか心理的駆け引きをしてるのだ。駆け引きというより戦い。男が勝ってるように見えてその実、最後に笑うのは女。イタリアの廃墟の中で最後にBBにすがりついて愛を乞う男に対し、長い金髪を風になびかせ泰然と微笑むあのラストシーンがまさに戦い終えた戦士の休息なんだろう。つまり休息であってまだ戦いは続く...と匂わせる。男女の心の機微は尽きない。

2つの全く毛色の違う恋愛映画を見終わって、2つともそれなりに楽しめるが、私にとって心に残り、刺激を受け、女主人公になった妄想を楽しめるのは古くても不自然でも「戦士の休息」のようなフランス映画だなとあらためて認識した次第。

 


 

Last updated 10/23,2015

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