Mel Gibson: Les Ailes Du Plaisir (The Wings of Pleasure)

Studio Magazine, 1990-11  Interview: Christophe d'Yvoire

フランスのジャーナリストが取材したおそらく初めての本格的なロングインタビュー。印象と考察で埋められた前文だけでも読みごたえがある。「エア・アメリカ」と「ハムレット」への思い、ちょっとした演技論等を楽しく答えている。その様子が伝われば嬉しい。

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Mel on the cover : Studio Nov. 90
STUDIO 1990-11, France

メル・ギブソンは他のアクションヒーローとはひと味違う。気取りや飾り気のなさ、独特なユーモアセンス、生きてる歓びといったものが備わっていて、とても身近で心魅かれるものがある。以下のインタビューでそれがよく分かるだろう。


<<友達と賭けをしたんだ。もしタバコに手を出したら僕の負け。ここ数年来しつこく付きまとっているパパラッツィに撮影を許す事になる。奴ときたちょっと外に出るだけでフラッシュをたく。ぶん殴ってやりたいね。奴を喜ばせるつもりはないね。今はたばこを見るとゾッとするよ。奴に撮らせるくらいなら禁煙したほうがましさ.....>>

 

この日L.A.のホテルの続き部屋に30人ものジャーナリストが集まった。Air Americaのための1日かけてのノンストップジャンケット。午後も遅くなりほとんどの記者が家路に着く頃、どうにも我慢ができなくなったらしく、メル・ギブソンは何気なく廊下に消える.....先ほどの宣言にもかかわらずこっそりマルボロに火をつけるために!
私が見つけた時の彼の反応といったら、まず初めに校庭で喫ってるところを見つかってしまった子供のお馴染みの目つきを見せ、ついで顔いっぱいに輝くばかりの笑いが広がる。時に若々しく悪戯っぽく、時に心からの喜びを映し出す笑顔。

 

初めての会見の間、メル・ギブソンはまずその飾り気のなさで我々の心を打った。物腰のどれひとつ取っても我々が知るところのスターの印、わざとらしさとか不自然なふるまい等がみられない。実をいうと彼には威嚇的なところさえなく、この形式的なインタビューなんかうっちゃって、すぐにでも彼と一杯飲りに行きたいと思ったほど。ただ共に過ごす時を楽しむためだけでも。彼にはなんというか、仲良くなるのに仲介のいらない直接的な親近感といった印象が強いのだ。隔たりがなく妙なためらいや変な癖もそこにはない。彼は相手をたらし込もうとか、あっと言わせようとかの努力なんかしていない。こちらの質問の真意を素早く掴みほとんどいつもすぐに答えを寄こす。

 

現在34才。彼はアメリカ映画界のもっとも魅力ある俳優の一人だ。人気者、あるいは時の人としてあらゆるジャンルの雑誌に定期的に取り上げられている。またトム・クルーズやケヴィン・コスナー等と並んで最もファンの数の多さを誇るスターでもある。それをよく知るには夏の初めにアメリカで封切られたBird On A Wire後のほとんどヒステリックな反響を観察するだけで十分だ。ちなみにそこでは何秒かの間、彼の裸の尻のアップを見る事ができる.....

 

With George Miller, the director of Mad Max trilogy
ジョージ・ミラー監督と

本当に多くの人々が彼のことを大好きなのだ。観客はもちろんプロデュ-サ-達(彼は大ヒットを打ち立てられる数少ない俳優の一人)監督達、そして共演者達も。彼等はこの俳優を称賛するチャンスがあれば決して逃さない。
こんな栄誉がもたらされたのはつい最近のこと。十分な分け前に預かる事ができるスターの身分を味わうのは、もっぱらLethal Weaponの驚異的な大成功からこっちのことでほんの3年前だ。

 

11人の子だくさん一家の6番目としてニューヨーク州で生まれたが、12歳の時アメリカを離れ世界のもう一つの果てオーストラリアに移り住む。父親の決断によるもので、このいささか過激で熱心なカトリック教徒(教会と法王の政策に対して論議を生んだいくつかの本を執筆している)は子供達に、厳しいと同時に自由で寛大な教育と躾を施した。
<<ある日親父が言った言葉は決して忘れない。「人生に退屈する事は罪だ」>> この言葉はしばしばメル・ギブソンの口に上る。

 

1979年国立の演劇学校を卒業して間もなく、Mad Maxを共に作る事になるジョ-ジ・ミラーと出会う。のちに世界中のあらゆる国でカルト的映画になる近未来のロ-ドム-ヴィ-....大成功とはいえなかったアメリカを除いて。 最小限の台詞でギブソンはこの時既に、その磁力のような存在感を多くの人に認めさせ、この役の持つある種の難しさと共に他の要素、例えば人間味、威厳、信憑性といった必要な特徴までも自然に生み出す域に達していた。

Peter Weir and Mel Gibson on Gallipoli
ピーター・ウィア監督と

2年ほどたって彼は別のオーストラリア人の演出家と出会う。のちにDead Poet Society [今を生きる]を作ったピーター・ウィアーだ。彼とまずGallipoli[誓い]を撮り終えた後、Mad Max2を間に挟み、A Year of Living Dangerously [危険な年]で再会。Maxシリーズとは異なるジャンルに置かれるこれらの作品でウィアーはギブソンに、彼の魅力を形作る事になる愛すべき陽気さと男の誠実さが混じりあった特質を引き出すチャンスを与えた。 やがて彼はオーストラリアでは誰ひとり知らぬ者のないくらいの人気俳優となるが、まだハリウッドを虜にするには至らなかった。そのオーストラリア訛りのせいである。ハンサムなナイスガイとはいえハリウッドは真剣に取り上げなかった。

 

それでも1984年アメリカのプロデューサーがthe Bounty [バウンティ:愛と反乱の航海]のちょっと珍しいリメイク版の主役を彼にオファーする。その中で彼は輝いていたが、映画は中クラスの凡作に留まった。オーストラリアへ一旦戻って作ったMad Max3作目はアメリカでも素晴らしい反応を勝ち取り、ひいてはリチャード・ドナーをしてLethal Weaponのヒーロー役にと彼を指名するきっかけにもなった。これは1987年夏の超目玉ヒットとなる。

 

Lethal Weaponは疑いなく俳優ギブソンのより優れた資質を存分に表した作品と言えるだろう。この常に「ギリギリの所にいる」刑事の役を見た印象は、これが俳優が演じたものとはとても思えないという事だ。その演技はアドリブや即応性が強く、創意や機智に富みおまけに向こう見ずだ。まるでその役柄にというのでなく、その一瞬一瞬に賭けているよう。シャボン玉がどっから来てどこへ飛んでいくかなんてことはどうでもいい。重要なのはそれが光り輝く瞬間だ。
<<役者がこういう演技の大変さをあれこれ噂してるのを聞いても全部信じちゃいけない。何よりもこれは僕が楽しんでやっているってこと>>  メル・ギブソンはかように享楽家である。これこそ他人と彼の違いを決定付ける要素なのだ。なぜならそのすべての演技は歓びや楽しみを追求する事に向けられているのだから。

彼はいわゆる典型的なアメリカ人俳優の型からはみ出している。彼がハリウッドのシステムに完全に同化しているようには我々の目には感じられないとしても、似通ったステータスに達している多くのスターたちがそうであるように、彼もまた反抗的な人物というわけではない。 <<11人兄弟の家庭でどう反抗的になれるんだい? 食事時には5歳上の兄貴と両親の間に座らされたよ。うるさく騒ぐたびに、彼等にこっぴどく叱られた>>

 

さらに彼の実像は我々が勝手に作ったイメージとはかけ離れている。何ヶ月か前アメリカの"US"誌が彼を「今年の最もセクシーな男」として讃えたまさにその時に、ギブソンは6番目の子供が生まれた事を発表した! それなのに多くの大物プロデューサーが彼を引っ張りだこにしてるのだ。彼の心がハリウッドになく、撮影が終わると矢も盾もたまらず、そそくさとオーストラリアの農場に戻ってしまうという事も認めた上でだ。そして、南半球の大牧草地に取り憑かれているんだから、とっくに申し分のないカウボーイの親玉だろうと想像すれば、実はHamletでそれをマスターするまでは全然馬には乗れなかった事も知る....

 

アクションコメディのAir America の後、すぐに様々なレッスンを受けながらまるで彼本来の天性とは対極にあると思われるシェークスピアの作品の中でも、最も複雑な人物になる事によって、ギブソンは今回新しい野心のほどを見せつける。ピストルも派手なカーチェイスもなしで。
かれ言うところの<<見かけの優柔不断さの中に、ハッキリとした一貫性が存在する>>役柄を洞察する事に単純な歓びを感じながら。さらに言う;<<ハムレットは僕なんか足下にも及ばないくらい知的な人物なんだ....>> 今までに俳優がこの役についてこういう言葉で話したのを我々は果たして聞いた事があっただろうか。

          

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Mel on the COVER

BRAVEHEART

Happy 15th Anniversary

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Variety, USA 1995
Variety, USA 1995

新しい年を迎えた。2010年。皆様におかれてもさらに良き年になりますよう。

日付けは1月2日になってるが、もう3日。1月3日と言えばメル・ギブソンの誕生日。「おめでとう、メル!」のついでに毎年この日に新年のご挨拶をしてる(^^)。

 

メル・ギブソンのファンサイトを運営する私にとっては、今年は楽しみが多い。公開を控えた2本の主演映画、監督するのが決まってるもの1本、春頃開始の主演作1本と久方ぶりに映画人メルがおおいに動く。できるだけ追っていきたいと思うが、また今年はたった4ページから初めた本サイトの10周年、さらにWhat Women Want 「ハート・オブ・ウーマン」のロスアンジェルスプレミアに幸運にも参加でき、幸運にも生身のメルギブソンに会えた記念すべき出来事の10周年も迎える。

10周年?! なんてこと、紀行文はそのうち書きます...などと言いつつ忙しさにかまけ、さぼってたら10年! 最近ひとしお思う。地球の自転が実は密かに速くなってるんじゃないかと....大昔古代マヤ人が予言してたのはこの事じゃないかと。しかし嘆いても仕方ない。自転は停まってくれないだろうし、やることはいっぱい。せめて10周年記念として上記プレミア紀行文でもアップしよう。

 

さて去年の暮れ続けてジャンルは同じ恋愛ドラマになるだろうが、全く毛色の違う2本を観た。ひとつは鑑賞券を得て久しぶりの劇場でロードショウとして、サンドラ・ブロック主演The Proposal「あなたは私の婿になる」を楽しんだ。

S・ブロックは好きな女優の一人だ。いったい美人なのかセクシーなのかよくわからない雰囲気が気に入ってる。コメディでは笑わせてくれるし、筋肉質に近い体つきに見えるがグラマラスなのもいい。

やり手のカナダ人キャリアウーマンがヴィザの更新ができないため、とっさに部下の若い男との偽装結婚を思いつき、彼の実家に行くはめになりドタバタが始まる。大都会シカゴからおおらかなアラスカに行くくだりは傑作。そこに行って部下の実家が土地の素封家でお屋敷のような家を見て驚くブロックの演技も最高。

しばらく見ればもう結末は推して知るべし。アメリカのロマンチック・コメディなら複雑な筋立てなし、不幸な結末なし、スピーディな演技とファニーな台詞、一人か二人の意地悪な妨害役...と約束通りの展開で、それでもブロックのうまいコメディエンヌぶりがおおいに笑いを誘い、ハンサムな相方、ライアン・レイノルズがちょっとすっとぼけた人のいい役回りで、あれよあれよと言う間に二人は本物の恋に陥る。ところでこのレイノルズ、確かにいわゆるイケメンで日本の女の子好みのように感じられたが、残念、私の好みじゃない。40歳くらいになったらどうかな。

安心して座席に身を預けられる映画の典型だ。問題提起や意識を刺激される事もあまりない。単純に楽しむ映画。この手の映画はアメリカならではだろう。アメリカの観客のためのアメリカ的ロマンスもの。以下に書くフランスの恋愛映画なんてきっとアメリカじゃはやらないだろう。

 

1962年フランス/イタリア合作 Le Repos Du Gerriere 「戦士の休息」。すでに別れてはいたが、妻だったブリジット・バルドーを主演に迎えたロジェ・バディム監督作品。同じ恋に陥っていく男女を描いてもこうも違うのかとあらためてフランス映画の妙を見せつけられた思い。この映画は昔一度劇場で見て、BB(ベベ)のふくれっ面の愛らしさにうっとりし、音楽の美しさに魅了されたのを覚えてて、今回ふと思い出しレンタルしたのだが、当時「戦士の休息」(原題通りの訳)と言うタイトルの意味するところが当時よくわからなかった。

偶然に出会った男に惹かれ一緒に暮らし始めるが、この男が何か病理的な暗さを持ち、不実なのだ。フランス映画、特に恋愛ものはアメリカの言ってみればわかりやすく結末まで読めてしまうようなプロットの作りよりも、なぜだかわざわざこちらをイライラさせるような演出や脚本になってる事が多い。実はそういうところも含めてフランス映画が好きなのだが、アメリカ的ストーリー展開に慣れてしまうと、とても不自然に感じられるかもしれない。

しかし実際の男女の心の機微とは単純なものではないし、はたからみれば不自然な行動や言動がつきものだ。この映画もそういう意味では単純でなく自然でない。つまり二人は知ってか知らずか心理的駆け引きをしてるのだ。駆け引きというより戦い。男が勝ってるように見えてその実、最後に笑うのは女。イタリアの廃墟の中で最後にBBにすがりついて愛を乞う男に対し、長い金髪を風になびかせ泰然と微笑むあのラストシーンがまさに戦い終えた戦士の休息なんだろう。つまり休息であってまだ戦いは続く...と匂わせる。男女の心の機微は尽きない。

2つの全く毛色の違う恋愛映画を見終わって、2つともそれなりに楽しめるが、私にとって心に残り、刺激を受け、女主人公になった妄想を楽しめるのは古くても不自然でも「戦士の休息」のようなフランス映画だなとあらためて認識した次第。

 


 

Last updated 10/23,2015

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