南北戦争時の硬派なウエスタン「セラフィム・フオールズ」"Seraphim Falls"

「セラフィム・フォールズ」オリジナルポスター

「映画」カテゴリーにはメル・ギブソンに少しでも関わりのあるものだけに限らず主にみんなに勧めたい、あるいはお気に入り映画の感想や覚え書きを書いていくつもり。とりいそぎ他所に投稿したのを移転。あと旧サイトに書いた過去のものいくつかもここに移すつもり。

 

さてメル・ギブソンの製作会社Iconプロダクションズ2006年公開(日本未公開)のこの作品、大ヒットはならずともアメリカでのレビューが好評だったので公開を待ってたが、ようやく最近DVD化されたので借りて観た。「セラフィム・フオールズ」というのは地名だとずいぶん後でわかる。プロットは起承転結でいえばいきなり承から始まり、起の部分は追々明かされていくというものだ。だが始まりから緊迫感とハラハラが続き目が離せない。

冒頭ピアース・ブロスナン扮する元北軍の将校は我々にまだ明かされない理由でリアム・ニーソン扮する元南軍将校カーヴァー率いる追っ手に執拗に追われている。映画は全編がこの二人の過去の不幸な出来事に発する確執による追跡劇だ。元北軍将校ギデオンがナイフ一本で雪山から荒涼とした砂漠まで、追っ手をひとりまたひとりと倒しつつ生き延びるためのサバイバル術は見事だ。ただしアメリカではそのサバイバル術描写があまりにリアルという理由でR指定を受けた。

 

ここでトリヴィアをひとつ。ニーソン主演の1995年公開の「ロブ・ロイ」を見た人なら、もしかして思い出されるかもしれない。あれも追われる主人公が工夫を凝らして追っ手を撒くシーンがあったが、今回その一つをちゃっかり敵役ブロスナンがいただいている。もひとつ、公開年が同じなのでどっちが先だか知らないが、「アポカリプト」のあの究極のスタント場面のそっくりも(もちろん私が気がついたお節介に過ぎなく、製作側が知ってるかどうかは不明)

 

映画はほとんどをニューメキシコ州でたった45日で撮影したそうだ。この映画のほんとの主役は登場人物が雪山から平地、砂漠と移動することによって多彩な顔を見せるアメリカ西部の自然だと思うくらい実に厳しく雄大で美しい。台詞も少なく映像によって見せているから景色は雄弁だ。カメラがオスカー受賞者であの「ブレイブハート」も撮ったジョン・トールということで納得。もちろん二大アイリッシュ俳優も役柄にぴったり。特にブロスナンは見事にジェームズ・ボンドの殻を脱ぎ捨ててハマリ役。本人は喜んでこの汚れ役を引き受けたそうな。

 

硬派な、と形容したのはヘラヘラ、ニタニタした場面がまったくなく女性が絡まない意味で。もちろん女性は出てくるが最終シーンで、後からあれは砂漠の蜃気楼だったのかとも思える幻想的、妙なる女行商人としてキーパーソン的な役で出演するアンジェリカ・ヒューストンを除けば、説明的な役に終わっている。男ひとりのサバイバル行とそれを追う冷徹な男となったら軟派の出る隙はない。よってこの映画はデートムービーあるいはファミリー映画としては勧めない。特に子供はまだ見ない方がいい。

 

「逃亡者」とか「ランボー」とか「明日に向かって撃て」それについ最近の「アポカリプト」など思い浮かべたりしながら見てたが、特に太陽がぎらつく砂漠のシーンに移ってからはしきりに頭によぎったのは往年の名画「眼には眼を」だ。復讐というテーマのせいもあるが、人が自然に置かれた時の卑小さを両方ともうまく描いてると思うから。つまり壮絶なサバイバルを求められない日常では別段意識しない自然の恵みと脅威は、意識すると自分の卑小さを思い知るということだ。またIMDbのユーザーレビューには「既存の西部劇というジャンルを超えた知的なウエスタン。イーストウッドの "許されざる者"以来の傑作...」ともあり同意。

 

公式サイト(英語 Iconmovie.net内)

DVDリリース公式サイト(英語 Sony Pictures内 予告編あり)

 

Mel on the COVER

BRAVEHEART

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Variety, USA 1995
Variety, USA 1995

新しい年を迎えた。2010年。皆様におかれてもさらに良き年になりますよう。

日付けは1月2日になってるが、もう3日。1月3日と言えばメル・ギブソンの誕生日。「おめでとう、メル!」のついでに毎年この日に新年のご挨拶をしてる(^^)。

 

メル・ギブソンのファンサイトを運営する私にとっては、今年は楽しみが多い。公開を控えた2本の主演映画、監督するのが決まってるもの1本、春頃開始の主演作1本と久方ぶりに映画人メルがおおいに動く。できるだけ追っていきたいと思うが、また今年はたった4ページから初めた本サイトの10周年、さらにWhat Women Want 「ハート・オブ・ウーマン」のロスアンジェルスプレミアに幸運にも参加でき、幸運にも生身のメルギブソンに会えた記念すべき出来事の10周年も迎える。

10周年?! なんてこと、紀行文はそのうち書きます...などと言いつつ忙しさにかまけ、さぼってたら10年! 最近ひとしお思う。地球の自転が実は密かに速くなってるんじゃないかと....大昔古代マヤ人が予言してたのはこの事じゃないかと。しかし嘆いても仕方ない。自転は停まってくれないだろうし、やることはいっぱい。せめて10周年記念として上記プレミア紀行文でもアップしよう。

 

さて去年の暮れ続けてジャンルは同じ恋愛ドラマになるだろうが、全く毛色の違う2本を観た。ひとつは鑑賞券を得て久しぶりの劇場でロードショウとして、サンドラ・ブロック主演The Proposal「あなたは私の婿になる」を楽しんだ。

S・ブロックは好きな女優の一人だ。いったい美人なのかセクシーなのかよくわからない雰囲気が気に入ってる。コメディでは笑わせてくれるし、筋肉質に近い体つきに見えるがグラマラスなのもいい。

やり手のカナダ人キャリアウーマンがヴィザの更新ができないため、とっさに部下の若い男との偽装結婚を思いつき、彼の実家に行くはめになりドタバタが始まる。大都会シカゴからおおらかなアラスカに行くくだりは傑作。そこに行って部下の実家が土地の素封家でお屋敷のような家を見て驚くブロックの演技も最高。

しばらく見ればもう結末は推して知るべし。アメリカのロマンチック・コメディなら複雑な筋立てなし、不幸な結末なし、スピーディな演技とファニーな台詞、一人か二人の意地悪な妨害役...と約束通りの展開で、それでもブロックのうまいコメディエンヌぶりがおおいに笑いを誘い、ハンサムな相方、ライアン・レイノルズがちょっとすっとぼけた人のいい役回りで、あれよあれよと言う間に二人は本物の恋に陥る。ところでこのレイノルズ、確かにいわゆるイケメンで日本の女の子好みのように感じられたが、残念、私の好みじゃない。40歳くらいになったらどうかな。

安心して座席に身を預けられる映画の典型だ。問題提起や意識を刺激される事もあまりない。単純に楽しむ映画。この手の映画はアメリカならではだろう。アメリカの観客のためのアメリカ的ロマンスもの。以下に書くフランスの恋愛映画なんてきっとアメリカじゃはやらないだろう。

 

1962年フランス/イタリア合作 Le Repos Du Gerriere 「戦士の休息」。すでに別れてはいたが、妻だったブリジット・バルドーを主演に迎えたロジェ・バディム監督作品。同じ恋に陥っていく男女を描いてもこうも違うのかとあらためてフランス映画の妙を見せつけられた思い。この映画は昔一度劇場で見て、BB(ベベ)のふくれっ面の愛らしさにうっとりし、音楽の美しさに魅了されたのを覚えてて、今回ふと思い出しレンタルしたのだが、当時「戦士の休息」(原題通りの訳)と言うタイトルの意味するところが当時よくわからなかった。

偶然に出会った男に惹かれ一緒に暮らし始めるが、この男が何か病理的な暗さを持ち、不実なのだ。フランス映画、特に恋愛ものはアメリカの言ってみればわかりやすく結末まで読めてしまうようなプロットの作りよりも、なぜだかわざわざこちらをイライラさせるような演出や脚本になってる事が多い。実はそういうところも含めてフランス映画が好きなのだが、アメリカ的ストーリー展開に慣れてしまうと、とても不自然に感じられるかもしれない。

しかし実際の男女の心の機微とは単純なものではないし、はたからみれば不自然な行動や言動がつきものだ。この映画もそういう意味では単純でなく自然でない。つまり二人は知ってか知らずか心理的駆け引きをしてるのだ。駆け引きというより戦い。男が勝ってるように見えてその実、最後に笑うのは女。イタリアの廃墟の中で最後にBBにすがりついて愛を乞う男に対し、長い金髪を風になびかせ泰然と微笑むあのラストシーンがまさに戦い終えた戦士の休息なんだろう。つまり休息であってまだ戦いは続く...と匂わせる。男女の心の機微は尽きない。

2つの全く毛色の違う恋愛映画を見終わって、2つともそれなりに楽しめるが、私にとって心に残り、刺激を受け、女主人公になった妄想を楽しめるのは古くても不自然でも「戦士の休息」のようなフランス映画だなとあらためて認識した次第。

 


 

Last updated 10/23,2015

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